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「舐められないことが大切です」

緊急事態宣言が解除されました。新規感染者数が激減して、ウイズコロナの新しい日常が始まりました。繰り返し、緊急事態宣言が出されて『延び延びになっていた臨検』も再開され始めています。

4月に、突然、監督官2人が訪問。その後、緊急事態宣言が繰り返されて7か月以上の期間、臨検が止まっていた臨検もあります。緊急事態宣言が解除されたら、途中で止まっていた臨検が次々と再開されています。

  • 止まっていた7か月の期間

喉にとげが刺さったような心持でした。私が、ストレスに感じていたわけですので当事者であるクライアントの方々のストレスはその何倍ものストレスだったと察します。臨検の目的は下記です。

  • 各種労働法令を
    企業で適正に遵守させること

現状の違法状態に関して処罰するのは、基本的には未来に向けて改善させて、法令上、適正に遵守させるためです。未来に向けて改善させるためにどの程度の勧告や指導を出していくのかについて監督官の個人差が出てくるバッファーの部分です。

是正勧告は、明らかな法令違反に対して出される処分です。法令違反の状態を正して、正したことを報告していく対応になります。

指導は、明らかな法令違反ではありません。指導を受けた場合、臨検での監督官と実際に対応したやりとりがとても重要になってきます。

会社側の主張に関して、ある程度、監督官に納得して頂けないと臨検が終わりになりません。監督官が納得できない場合。指導書で出された内容に関して回答書を作成して提出しても受理して頂けずに、差し戻されることもあります。

過去に同じような指導を受けて同じような回答書を出して臨検が収束したケースでも当日の監督官とのやりとりによっては収束しない展開もあり得るのです。やはり、監督官との調査を受ける実際のやりとりの場が何よりも大切になってきます。

労働基準監督官は臨検監督や行政指導を行う行政官です。同時に、「特別司法警察員」としての地位も持っています。監督官は会社の行為が悪質だと判断した場合、経営者などを送検することができるような権限が付与されています。

ケースによっては、私の方が監督官よりも法律に精通しているケースもあります。監督官は、日常的な活動で就業規則などの条文内容を確認しても実際に条文を作成することはありません。完成されている内容について法的な視点で確認をするのが仕事であり、現状の状態を条文にしていくことは対応していないのです。

私とは鍛えられている能力が違うのです。また、同じ景色を見ていても監督官から見えている景色は私が見ている景色とは違うものです。

そもそも、私とは立場が違います。特に臨検のときでは、全く、立場が違います。どんなに若手の監督官であっても、監督官は監督や指導を行う立場であり、何よりも司法警察の圧倒的な権力を持っています。

そもそもの立場が違うことはもとより、現実は、私とは、身分が違うのです。下記のような言葉もあります。

  • 官尊民卑

誰かが取り締まらなくてはいけません。公務員という仕事の特性だと理解してその役割として受け容れています。それに監督官になる人は、人格者の人が多いのです。ベテランの監督官で人格者でなかった人とお会いしたことはありません。

臨検には、大きく分けて次の4つのタイプがあります。

  1. 定期監督
  2. 申告監督
  3. 災害時監督
  4. 再監督

今回の臨検が4つのカテゴリーの中でどのタイプであるかをまずは確認することが大切です。

一番、甘い臨検は、定期臨検です。定期監督は、労基署の年間計画に基づいて、対象となる事業場を決定されています。

形式的に臨検の数だけをこなす臨検のケースもあります。しかし、最近は形式的な定期監督の臨検でも形だけではなく、内容について厳しく確認されて問われる傾向にあります。定期臨検から始まった臨検でも対応を間違えると、泥沼化して長期化することも少なくありません。

  • 「簡単なことを難しく展開させずに
     簡単に済ませること」

プロの仕事とは静かに勝つのが常道です。最近多いのが申告監督です。いわゆる、『タレコミ』から始まる臨検です。実際は『タレコミ』で始まった臨検でも建前上は定期臨検である旨を告げられて臨検の対応を展開されることが多いのが当然です。

災害時監督の場合では労災事故の発生が発端になります。重篤な事故が起きれば、当然に監督官は現場を視察にきます。事故の重篤度によっては監督官だけではなく、警察官も現場検証に来る展開です。

再監督のケースは、定期監督、申告監督、災害時監督について適正に改善がなされているかを後日、調査する対応です。いわゆる、監督署から『目をつけられる』という対応になります。重篤な労災事故が起こり、改善がなされていないブラック企業について、監督署は、日常的に目を光らせています。

また、ブラック企業ではなく、ホワイト企業であっても監督官の指導をしやすい企業に関しては再監督になりやすい傾向があると感じています。監督署の方も、行き易い企業があると感じています。別の監督官でしたが2年連続で臨検になったこともありました。

最近は、監督官不足が指摘される中で若手の監督官の採用を増やしています。そのため、若手の監督官の勉強を兼ねて臨検に選ばれている企業もあると感じています。

どんな業界であっても若手に勉強させるために同席させて対応をさせる必要があるのが実情です。どんな理由で臨検が開始されても難しい対応に展開してしまい、大変な状況に陥ることは珍しいことではありません。

臨検になると企業側は相当なストレスを受けます。実際に凌いでいく経験をしないと伝えていくことは難しいのですが、下記のことが大切です。

  • 『舐められないこと!』
    「舐めないこと!」

舐められて良いことなどは一つもありません。「分かっていない」と思われることが、まずい展開になる対応ケースです。「可愛がられる」のと『舐められる』のは、似て非なる状況です。

  • 『監督官には舐められないように!』
    「監督官を舐めないように!」

上記の2つの姿勢が重要かつ大切になります。監督官は、立場も身分も違います。そもそも持っている権力が違うのです。緊急事態宣言が解除されましたが、若手のモチベーション溢れる監督官には、そんなに張り切って頂かずに、お手柔らかにして、勘弁して頂きたいです。

作成日:2021年10月25日 屋根裏の労務士

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