コラム Column

消費者の『召使い』ではありません

先週、宅配サービスで約5割のシェアを握る最大手のヤマト運輸が、9月末までに宅配便の基本運賃を引き上げる方針を固めました。ヤマト運輸の全面値上げは消費増税時を除くと27年ぶり。アマゾンジャパンなどの大口顧客と交渉に入ったと報じられています。

ヤマト運輸の宅配便の基本運賃を引き上げの報道がなされる中。先週は、ヤマト運輸の労務問題も報道されていました。36協定違反や未払い残業代などの労務問題です。

  • 「宅配便の基本運賃の引き上げ」と
    「長時間労働による未払い残業代の問題」

上記の2つの問題が関連しているということ。誰もが、容易に察することができるでしょう。ヤマト運輸の会社側も、値上げによる増収分で、働き手の待遇改善を進めなければ、配送網を維持できないと判断したようです。

究極までに、『便利さ』を追求してきた宅配便サービス。市場の労働力不足を踏まえて、曲がり角を迎えていると言えるでしょう。今回の値上げの背景には、下記があります。

  • ネット通販の急成長

小生も、一年中繁忙状態で、買い物に出かけるための余暇の時間がありません。そのため、度々、アマゾンのネット通販を利用させて頂き、ヤマト運輸のお世話になっています。最近は、少額商品でも配送料無料という場合も多くなりました。ネット通販が急成長して、宅配業者は一年中繁忙状態でも、利益はなく、あまり儲かっていないのだと思います。

ヤマト運輸の宅配便の値上げや未払い残業の問題を受けて、メディアでも各種報道がされています。今回の値上げの中で、下記のことが大きく取り上げられています。

  • 多くの人が、「過剰サービス」と感じる再配達システムの見直し

宅配業者の行き届いた再配達システム。あのすばらしいサービスが、空気の如く、『当たり前のサービス』だと思っている人。実は、意外と多いそうです。再配達の予約をしているのにも関わらず、配達指定日に不在にされることも珍しくないそうです。

小生は、自宅には、宅配ボックスがあります。会社の近くには、ヤマト運輸の営業所があるので、再配達システムのお世話にはなりません。ヤマト運輸の担当者とは、顔なじみになっています。近所ですれ違うとお互いに挨拶をする間柄です。

営業所に不在連絡票の荷物を取りにいくことがあっても、営業所のほとんどのスタッフとは、顔なじみになっており、証明書を提示する必要もない間柄になっています。ヤマト運輸の担当者は、とても親切です。重たい荷物の場合、荷物を取りに行っても、台車に積んで運んで頂いたりしてくれます。

ヤマト運輸の担当者のお話しでは、営業所の近くに住んでいる方でも、わざわざ、営業所まで荷物を取りに来てくれる人。滅多にいないそうです。再配達を指定されても、不在のことも多いそうです。また、連絡が来ないのであれば、何度も再配達することになるそうです。

ヤマト運輸の再配達システム。小生は、「すばらしいサービス」を超えて、『怖いサービス』だと感じることがあります。再配達の料金は、価格に入っているはずだし、価格に入っていないのであれば、誰かが、タダで、泣き寝入りをして働いていることになるからです。

以前、宅配の荷物を取りに営業所に行ったときに、ヤマト運輸の担当者に下記の言葉をかけたことがあります。

  • 「ヤマトのサービスは凄いですが、
    宅配の仕事は、大変ではないのですか?」

それに対して、担当者の方は下記の様に即答していました。

  • 「この仕事を選んだのですから、仕方ありません」

30歳を少し過ぎたぐらいの中堅の担当者だったのですが、私は、とても感心した心持になったことを覚えています。私がヤマト運輸の担当者に、感心した心持になったのは、下記の様に感じたからです。

  • 担当者から、「プロフェッショナル意識」を感じたから

「宅配業者としてのプロ意識と使命感」。何か、担当者から強く感じたのです。愚痴や不満などは、一切、言わずに。「この仕事を選んだのですから、仕方ありません」と自然に、さっぱり、楽しそうに、笑顔で、言えているからです。

  • 現実逃避で、『仮の自分』を、流して生きているのでなく、
    現実を受け容れて、「今の自分」で、力強く生きているのです。

しかし、そんな「プロフェッショナル意識」で、仕事ができるような人。どの業界にも、僅かに数えるほどにしかいないものです。多くの宅配業者の担当者は、再配達システムに悲鳴を上げているのです。宅配業界は人手不足で、仕事の需要があっても、働き手がいないのです。

人手不足などで、長時間労働が増えていることなどから、ヤマト運輸は、正午から午後2時の時間帯を指定した配達の取りやめなど、サービスの抜本的な見直しを検討している様です。

現在は無料の再配達について、荷主と共同で削減に取り組む一方で、「協力を得られないなら運賃体系に反映しなければならない」として、有料化に含みを持たせたコメントを出しています。

  • 宅配業者は、消費者の『召使い』ではありません。

プロフェッショナルのサービスには、敬意を払い、報酬を払うことが当然なのです。そうでなければ、その仕事をする人が、社会からいなくなってしまうからです。

日本のおもてなし文化は、過剰サービスで、影の部分もあるものです。サービスを甘受する消費者の意識を変えて頂くこと。おもてなし文化が行き届いた日本の市場で、必要になってきていることを感じるのです。

作成日:2017年3月13日 屋根裏の労務士

お問い合わせ

電話番号 03-3988-1771 受付時間9:00~19:00(土日祝祭日を除く)

お問い合わせ

コラム

  • 採用情報