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『グリーンライト』と「リーダーの決断」

プロ野球のペナントレースがはじまりました。プロ野球の中継やニュースを見ていると、今でも、時折、解説の中で、WBCの中で起きた、あのプレーの解説が取り上げられます。
  • プエルトリコ戦の8回、重盗失敗。

ベンチからの指示は、下記です。

  • 『行けると判断したら行け。』

上記は、近代野球の高度な戦術。グリーンライト。監督が具体的な指示を出さずに、選手に判断を任せるというもの。

台湾戦では、この戦術が功を奏して勝利。何度も映像が流れた、鳥谷の盗塁成功。しかし、プエルトリコ戦では、失敗して好機を逃す。翌日以降のメディアの多くは、ベンチの采配について、疑問視したり、辛辣な意見が多い。

私は、勝負は結果論であり、仕方ない側面も多いと思っています。野球の解説は、結果論が多いものです。

人生においても、ビジネスにおいても、あらゆることで、選択と決断が求められます。決断を下すことは、難しい。未来を見据えても、ベースとなるのは、下記でしょう。

  • その場、その時の状況での判断。

悪い展開、悪い結果をまねいた場合、その判断に後悔することもあります。しかし、大局的な見方をすれば、しっかりとした決断が出来て、トップ自ら全力で対応したときは、後悔はありません。

悪い展開、悪い結果をまねいても、そのときの切羽詰まった状況の渦中でのベストの判断だったことが多いからです。そして、その流れの中で、現在を受けて止めて、未来に生きていくことが出来るものでしょう。

日常的な労務の問題、難解な労務の相談でも、その場、その時の判断と決断が求められます。私は、悪い結果をまねいたときは、下記のようなことが多いと思います。

  • トップが、判断を下せなかったとき。

悪い結果には、傾向があるように思っています。実は、多くの場合、下記の2つのようなことをしてしまっていることが多いのです。

  • 『何も、決断をせずに、問題を先送り、現状維持を続けてしまっている。』

  • 『トップの判断を、現場の判断に、任せてしまっている。』

当社のクライアントの労務のレベルは高い。私に、相談してくる事案は、難解な相談が多い。判断を迫られることの多くは、法律には規定されていないことが多いのです。個別の事案に対して、都度、経営判断が求められるのです。マニュアル的な法律論の対応では、対処できません。毎回、自分たちの企業文化の中で、起きた個別の相談事案であり、都度個別に、判断して解決していくことなのです。

企業経営を営んでいけば、難しい労務の問題に対して、経営判断が迫られるときが、あるものです。そんな重大な決断が求められているとき、組織というのは、下記を続けてしまうことがあるのです。

  • 何も決断せずに、問題先送りの現状維持。

問題が起きて、実際にトラブルが、顕在化してくるまで、何も具体的に行動せず。その状況を議論しているだけの場合があるのです。特に、組織の規模が大きくなればなる程、責任の所在と指示系統が曖昧になり、現状維持を続けてしまう傾向になりやすいのです。また、気が付いているのに、放置してしまったこと。不思議と、何か悪い結果になってしまう気がしています。

  • まるで、それが、必然であるかのように。

難しい状況に対して、現場に丸投げにしてしまっているときも悪い結果をまねくことが多い。下記の言葉は、誠に、便利な言葉なのです。

  • 『現場に任せている。』

WBCの重盗失敗。批判が多かったのは、あの終盤の山場の局面では、中途半端な指示で、選手に判断を任せるのではなく、勝負師として、トップの決断を下すべきとの意見。

当社のクライアントに、物凄い会社があります。リーダーシップをもった幹部や管理職が集結しているような企業なのです。

ある日、かなり高度な経営判断を迫られる、労務の問題が起こりました。その時に、問題が大きくなる前に、私と打合せの擦りあわせをして、方向性を決めたら、経営判断を下して、役員自ら、現場の最前線に立ち、難解な問題を、始末してしまったのです。

そこの企業は、それなりの規模を有しています。社会的にも責任がある立場の企業。役員の数も多いし、リーダーも多い。上席役員が逃げようと思えば、『便利なレトリック』を使って、他の人に任せてしまうことも、出来たかもしれません。

  • 上の者が、その場から逃げるための、『便利なレトリック』や『便利な都合』。

そんなのは、いくらでもあるからです。上の者は、逃げようと思えば、いくらでも逃げることが出来るのです。しかし、そんなことはしない。そんな考えは、微塵もないのです。

自分の任期中は、全力で対応。会社の未来に向けた良い状況が何かを模索。それを自ら、率先して行動に移して、解決にあたるのです。そして、次の世代に、良い形で繋いでいくのです。会社がピンチだと思えば、自ら、体を張って、対処。

私は、その姿に、見惚れてしまいました。その時、その企業が持つ、強み。それが、分かった気がしたのです。そして、この企業が、現場レベルでも、数多くのリーダーシップを持つ人材が輩出している理由も。

ピンチや勝負のときは、トップが矢面に立つ。批判を直接受け、トラブルに対処。役員の肩書は、だて、ではありません。グリーンライトが、そぐわない場面もあるというのも、事実でしょう。

何が正しいかは、誰にも、わかりません。それを選ぶのが、リーダーの決断。しかし、大抵、しっかりと決断して、自らが、率先して行動できた場合、良い結果で終わるのです。

  • まるで、それが、必然であるかのように。

上に立つ者の器。それは、決して最後の結果論で、決まるのではありません。困難な時に、矢面に立ち、逃げずに、取り組んだ勝負の過程の中にあるのです。そんな上に立つ者の器。下の者は見定めています。

  • 自分たちのボスとしての存在であるか否かを。
    似非か、本物なのかを。

下の者は、本能レベルで感じとり、何より厳しい評価で、客観的に、ボスの器を見定めているのです。年齢、経験、実績などは、関係ありません。そんなボスの器である存在自体が、何より、下の者に安心感を与える精神的な支え。下の者は、この支えによって、現在および未来の活動に向けて、迷いなく、安心して、取り組めるのです。

今年も、プロ野球が開幕しました。ここぞという場面での、トップの戦術。トップの器としてのプライドをかけた決断。球場に足を運ぶと、そんなトップ決断の緊張感。ボスの器である勝負師としての空気。それが、ヒシヒシと伝わってくる時があります。今年も、そんな決断の美学が、楽しみです。

作成日:2013年4月8日 屋根裏の労務士

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