コラム Column

「なぜ、企業の労務で満点は必要ないのか?」

毎年、ゴールデンウィーク明けに、個人的な相談として、社労士試験の相談を受けることが度々あります。相談内容は、全員が概ね同じようなことです。
  • 『勉強が思うように進んでいません。』
    『どのようにしたら良いでしょうか。』

恐らく、思うように進んでいる人は、少ないでしょう。大抵の方が、日々、時間に追われながら、取り組んでいるのです。私は、いつも次のアドバイスをします。

  • 「とにかく、合格点を抑える勉強をすること!」

上記は、至極当然の当たり前のことだと思うでしょう。趣味で勉強しているわけでもなく、何か研究のために勉強しているわけでもないからです。

しかし、この当たり前を忘れてしまっていることが多いのです。とにかく、試験対策では、「合格点をとる程度の理解と記憶」をすれば良いのです。ここで大切なことは、下記のことです。

  • 「理解」の程度を確認すること

「理解」というのは、非常に個別性の高い、抽象的な表現なのです。
例えば、『分かっています。』という返答の中身は、各人によって様々なのです。一般に、安易に『分かっています。』と、すぐに返答する人程、出来ていないものでしょう。

試験では、正確な意味と一定の理解が求められます。まずは、それらを抑え込み、判断が出来れば良いのです。試験では、それほど深い理解までは求められていません。深い理解は、合格した後に自分が特化していく専門分野の中で行うことです。

どの程度までの理解が必要であるかは、過去の試験問題を確認すれば良いのです。テキストや条文を十分に理解してから、実際の問題に取り掛かろうとする人がいます。しかし、ある程度の理解で問題に取り掛ってしまい、その中で理解を深めていく方が早いと思います。問題に取り掛かることによって、自分が対応していくべきことが見えてくるからです。

上記のことは、現実のビジネスの現場や労務の対応でも同様です。例えば、何か制度変更をする場合、机上の会議やシミレーションは大切です。十分な打ち合わせや用意もせずに対応したら、失敗する可能性が高いでしょう。

しかし、どれだけ事前に用意をして、基礎データを検証していても実際に取り掛らなければ、始まらないことも多いのです。

どんなに用意をしても、誰かに不利益が伴う難解な制度変更では何か調整項目や交渉事項が出てくるのが当然と考えるべきでしょう。実際に行動に移すことにより、そのことがわかってくるのです。

人というのは、いつも悩みや心配は尽きないものです。勉強が進んできたり、何か実務ができるようになると高い次元における新しい悩みや心配が次々と出てくるものです。

社労士試験は、足切りがあります。特に午前中の選択問題は、正直、運の要素も多分にあるでしょう。一定限の知識がつき、理解が出来てくると解けない問題、難問が出た場合の対応が心配になります。そのときも下記アドバイスにおける原点に立ち返ることです。

  • 「とにかく、合格点を抑える勉強をすること!」

勉強が進んでいない状態と進んだ状態では上記の同じ言葉のアドバイスでも、別の次元での理解になってくると思います。

社会保険・労働保険の範囲は広いので初めて見る論点の問題もあるでしょう。恐らく、この世にあるすべての予想問題を解けるようになったとしても、本番で満点は取れません。仮に取れた方は、間違いなく凄い実力があるのだと思います。しかし、その満点は、偶然性の要素もあるはずです。

例年、大手の資格学校ですら速報の解答の段階では、暫定的なもので、後から間違いや訂正があると聞いています。さらに本試験の問題自体に、二重正解や解答なしのケースすら珍しくないのです。試験の作成者は、あえて満点を取らせないように作成しているのです。つまり、下記のことが言えるはずです。

  • 満点は必要なく、切り捨てる割り切りも必要。

受ける以上満点は理想ですが、現実的に取ることは出来ないし、その必要もない。誰もが、忙しく時間が無いのですから、試験で満点をとるような時間があれば、他のことに時間を有効的に使うべきでしょう。

私は受験講師を生業にしていないので、現在の具体的な試験の難易度などは分かりません。恐らく65点から70点が取れれば良いはずです。

同様のことは、現実の賃金制度などの制度変更実務でも言えるのです。国が抱える制度変更のジレンマ、企業が抱えるジレンマしかりです。通常、難解な制度変更で、誰もが納得できるような満点の対応などは無いのです。ゆえに、誰もが納得できるような満点の返答も存在しない。

仮に返答が出来たとしても制度導入が出来るか否かは別の問題であることが多いのです。また、その場を上手く丸め込み、強行で制度の導入は成功したとしても、一定の信頼関係が崩壊してしまったら、そのプロジェクトは、成功したと言えません。

大切なことは、ありもしない理念的な満点を追いかけるのではなく、現実と格闘し現実的な合格点をとっていき、運用をしていく中で調整を図り、信頼関係をつくっていくことなのです。

物事には、満点が必要なケースと合格点が必要なケースがあるのです。難解な労務の問題では、「今回のプロジェクトにおける合格点とは何か?」を考えて、今、企業がとるべき最大限のことを全力で対応していくことが、大切なのです。

  • 「合格点とは何か?」

上記を考えたうえで具体的な行動に移していくことは、あらゆることで、大切なことだと思うのです。

  • 皆様には、私もついています。
    合格点をとるべく全力で対応していきましょう。

作成日:2012年5月7日 屋根裏の労務士

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