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「現場処理」

毎年、8月の第4週の日曜日は、年に一度の社会保険労務士の試験日です。弊社のクライアントの担当者の中には、社労士の資格を持っている方も、少なくありません。有資格者のほとんどの方が、社会保険の事務担当者。私と労務のお打合せすることは、ほとんどありませんが、クライアントの社内には有資格者がいます。

試験を受ける方は、8月上旬の今の期間が、一番、辛く、苦しい、追い込みの時期。一番苦しい今の時期、試験を受ける方から、度々、下記のご相談があります。

  • 「勉強が、思う通りに進んでいません。」
    「やるべきことが多くて、不安と焦りが募ってきます。」

勉強が、計画通りに、進んでいる方。滅多にいないと思います。試験を受ける多くの人が、本業の仕事と家庭生活をこなしながら、ギリギリの状態で、受験勉強をしているのだと思います。

試験日までに、最低限やるべきことが、何とか間に合い、焦りと不安な心持で、当日の試験に臨んでいるのが、実情だと思います。十分な勉強時間を確保できて、すべてをやり切り、自信を持って、試験に臨める人の方が珍しいと思います。

私は、社労士受験の講師を生業にしていないので資格試験のことは、余り、わかりません。いつも、アドバイスしていることが、次のことです。

  • 勉強の範囲を広げないこと。

社労士の資格試験は、範囲が広いので、勉強をやりだし、調べ出すとキリがありません。法律や制度の深い理解まで、資格試験では、求められていません。専門家になるわけではないのですから、まずは、試験が通るレベルで、理解して暗記が出来ていれば、良いのです。

私は、次の勉強方法も、余り、お勧めしていません。

  • 綺麗なサブノートをつくること。

上記には、賛否両論がありますが、社労士試験は、範囲が広いので、中々、まとめきれないと思います。テキストをしっかりと読み込んで、過去問を解くというのが王道だと思います。何度も受験をしている方は、この試験が、次のことを求めているのだと、思い込んでいる節があります。

  • 「理解」と「暗記」をしながら、
    知らない論点を潰していくこと。

試験に通らなかったのは、知らない論点があったからだと思っているのです。「理解」と「暗記」は、試験を通るうえで必須の条件です。しかし、私は、もう一つ大切なことが、あると思っています。それは、次のことです。

  • 「その場での現場処理」

この試験では、必ず、知らないこと、テキストに載っていないこと、勉強していないことが出題されると思います。それが、午前中の選択式で出題されるのです。社労士試験は、総合点をクリア出来ても、分野別に一定点数をクリア出来なければ、合格になりません。

正直、選択式の空欄補充問題。「運」による要素が、多分にあると思います。どのテキストにも、載っていない論点が出題されるわけですから。知らない論点が出た場合、自分が準備して勉強してきた、「理解」と「暗記」だけでは、対処が出来ません。

その場で、知らない論点の文章を読み込んで、試験のその場で、「現場処理」をすることが求められるのです。正直、現代国語が苦手だった人は、不利な試験だと思います。

「運」で、合否のふるいにかけ、「現場処理」で解答を求める、選択式問題。廃止を求める意見も、受験者の中には、多数あります。特に、真面目に勉強を重ねて、択一で高得点をとっている方。納得いかない気持ちもわかるような気がします。

しかし、私は、その場の「現場処理」をすることを、試験で求めるのは、大切なことだと思っています。社労士の実務では、知識とその理解だけでなく、その場で「現場処理」が求められることの連続だからです。例えば、新しい労務の制度導入の時に、説明会を実施します。

クライアントから、次のことを依頼されることも少なくありません。

  • 「説明会での想定Q&A」を作成して欲しい。

私は、「説明会での想定Q&A」を求めるクライアントに対して、次の必要性も重ねて、説明していきます。

  • どんなに事前にQ&Aを想定していても
    必ず、その場での「現場処理」が必要になること。

制度を策定するときの毎回の打合せ。私が詳細に行うのも、皆様の理解を深めて、制度導入後の運用や「現場処理」が出来るようになることを目指しているからです。

労務のプロジェクトは、制度を策定して導入することだけが目的ではありません。プロジェクトに参加した方が、プロジェクトを通じて、各人の労務における能力を高めることも大切な目的の一つです。

説明会は、制度を導入する上で、大きな関門の一つです。社員からの質問とは、その会社に応じて、特徴的かつ個別的なことが多いものです。想定されうるストライクの質問だけでなく、デットボールになるような、想定外の質問も多いものです。

説明会を乗り切るためには、必ず、その場での「現場処理」が必要になるものです。その事実を受けとめ、腹を決めておくことが大切なのです。社労士の試験でも、必ず、「現場処理」が必要になるはずです。

「運」の要素も多分にある社労士試験。8月の辛く、厳しい、追い込みの努力が、試験に臨む皆様に、「幸運」を呼び込めることになることを信じています。

作成日:2014年8月4日 屋根裏の労務士

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